はじめに:「七夕の由来」ってどう伝えたらいいの?
7月7日の七夕(たなばた)は、織姫と彦星のおはなしを中心とした、子どもたちにも人気のある季節の行事です。
でも、いざ保育の現場で「七夕の由来を伝えよう」と思うと、
・「どこまで伝えたらいいの?」
・「小さい子にはどう説明する?」
と迷うこともありますよね。
この記事では、保育士目線で「子どもにわかりやすく」「年齢に合わせた」伝え方のコツをご紹介します。絵本・遊び・製作など、実際の保育にもすぐ取り入れられるアイデアもまとめました!
七夕(たなばた)ってどんな日?

七夕は、毎年7月7日に行われる、日本の伝統的な行事です。
笹に願いごとを書いた短冊を飾る風習があり、保育園や幼稚園でも毎年楽しみにしている子が多いですよね。
でも実は、この七夕には、お星さまのお話(伝説)があるんです。
織姫と彦星のお話(七夕の由来)
七夕の由来は、「織姫(おりひめ)」と「彦星(ひこぼし)」という星の神さまのお話から来ています。
昔々、天の川という大きな川のそばに、織姫というお姫さまが住んでいました。
織姫はとても働き者で、毎日まいにち、きれいな布を織っていました。そんな織姫を見て、お父さんの神さまは「そろそろいい人を…」と考え、向こう岸に住んでいたまじめな牛飼いの彦星と引き合わせました。
2人はすぐに仲良くなって結婚しました。でも…幸せになったふたりは、あまりにも仲良しすぎて、仕事をしなくなってしまったのです。
それを見た神さまは怒って、ふたりを天の川の両岸に引き離してしまいました。
でも、あまりに悲しそうなふたりの様子を見て、神さまはこう言いました。
「1年に1度だけ、7月7日の夜に、まじめに働いていたら会わせてあげよう」
それが七夕の夜なんです。
短冊に願いごとをするのはなぜ?
織姫は「はた織り」、つまり手を使った仕事が得意な女神さまでした。
そこから「七夕は、手の仕事が上手になることを願う日」と考えられるようになりました。
昔の中国では、七夕のころに「字が上手になりますように」や「はた織り(手仕事)が上手になりますように」と、願いごとをしていたそうです。
その風習が日本にも伝わり、「自分のがんばりたいこと」や「なりたい姿」を短冊に書いて、お星さまに伝えるために笹に飾るという風習が生まれたんです。
子どもたちにも、
「七夕は、お星さまに“○○ができるようになりたい”ってお願いする日なんだよ」
「織姫や彦星みたいに、一生けんめいがんばってると願いが届くかもしれないね」
といった感じで話してあげると、ぐっと親しみが湧くでしょう。
【年齢別】織姫と彦星の物語を子ども向けにわかりやすく伝えるコツ
年齢によって「理解できる内容」や「集中できる時間」が異なるため、年齢ごとに伝え方を工夫すると、より伝わりやすくなります。
【0〜2歳】イメージをふくらませて、短く・やさしく・繰り返しで
- 言葉数を少なくし、「お空にいるお星さまのお話だよ〜」という導入で。
- 織姫と彦星は、「はたおりが上手なお姫さまと、はたらきものの男の人」とだけ伝え、細かい設定は省きましょう。
- 「雨の日は会えないんだって。晴れたら“よかったね!”ってお空を見てみようね」と感情に寄り添って伝えるのが◎。
例文:
「お空のうえに、お姫さまとお兄さんのお星さまがいるんだよ。
ふたりは大好きなお友だちで、年に1回だけ会えるの。
7月7日は、その会える日。お空を見てみようね!」
【3〜4歳】簡単なストーリーとして伝える+感情を引き出す
- 少し長い話にも集中できるようになるので、起承転結を意識して話しましょう。
- 「一生けんめいおしごとをしていた2人が、なかよしになって、でも会えなくなってしまった」という部分に子どもの共感を引き出します。
例文:
「むかしむかし、お空に、おしごとがとっても上手な織姫さまと、働き者の彦星さまがいたの。
ふたりは仲良しになって、いっしょにすごしてたんだけど…
遊んでばかりで、おしごとをしなくなっちゃったから、神さまが『ちゃんとがんばってね』って言って、遠く離されちゃったんだって。
でも、年に一度だけ、会える日が七夕なんだよ!」
【5歳以上】「なぜ会えなくなったのか?」を含めて考える力も育てる
- 理由や感情の流れも理解できる年齢なので、行動の結果として「会えなくなった」という因果関係を伝えると納得感が得られます。
- 「もし自分だったらどう思う?」など、子どもと一緒に考える時間を持つのもおすすめです。
例文:
「織姫ははた織りがとても上手で、彦星は牛のお世話がとても上手でした。
2人は結婚して、とても幸せだったけど…楽しすぎて、毎日遊んでばかりに。
お仕事をまったくしなくなったから、神さまが『大切なことを忘れてはいけません』と、天の川をはさんで別々に住むことにしたんだって。
でも、ちゃんと頑張ったごほうびに、1年に一度だけ、七夕の日に会わせてもらえるようになったんだよ。
だから、七夕の夜に雨が降らないと、2人は会えるんだって!」
保育での七夕の伝え方アイデア5選

1. 絵本で伝える── イメージの入り口に
絵本は、物語を“視覚と言葉”で伝えることができる強力なツールです。特に七夕のような伝統行事は、絵と言葉が一体になることで、子どもたちが自然とイメージを持ちやすくなります。
おすすめ絵本:
・『たなばたプールびらき』(中川ひろたか/童心社)
→ 七夕とプールを結びつけた、子どもたちに身近なテーマで人気です。
・『たなばたバス』(藤本ともひこ/鈴木出版)
→ 楽しい展開で、小さい子にも伝わりやすいです。
・『たなばたセブン』(もとしたいづみ/世界文化社)
→ ヒーロー風のキャラクターで、小学生でもおすすめです。
2. パネルシアターや紙芝居── 動きで伝える物語
動きや展開のあるパネルシアターや紙芝居は、集中力が持続しにくい年齢の子にも効果的です。特に年中〜年長の子には、視覚的な変化があることで理解が深まります。
演じ手の表情・声色の変化で、織姫や彦星の気持ちを表現すると、子どもたちも感情移入しやすくなります。
おすすめ紙芝居:
・『ななちゃんのたなばた』(やすいすえこ/童心社)
→主人公のななちゃんが、七夕の日に自分の願いごとを考えながら、家族と一緒に短冊を飾るお話です。
・『キラキラぼしのたなばた』(あくざわめぐみ/教育画劇)
→星たちが登場する、幻想的で夢のある七夕のお話。色鮮やかなイラストが印象的で、静かに聞く時間にもぴったりです。
3. 手遊び・歌で導入──行事に親しみやすく
七夕にちなんだ歌を日々の保育に取り入れると、子どもたちが自然と行事に親しみを持ちます。リズムやメロディがあることで、記憶にも残りやすくなります。
おすすめ歌:
- 『たなばたさま』
→日本の伝統行事を感じられる情緒ある歌です。短調のメロディも子どもたちの記憶に残りやすいです。笹の葉を揺らすジェスチャーを入れて、手遊び風にするのもおすすめです。 - 『きらきらぼし』
→七夕の星の世界観にぴったり。0〜2歳児でも親しみやすく、導入としてもおすすめです。
4. ごっこ遊びに取り入れる
織姫や彦星になりきって遊ぶ「ごっこ遊び」は、想像力を働かせながら、七夕の世界観を味わうことができます。
言葉での理解が難しい年齢でも、身体を使って感じることで行事への興味が深まりますよ。
遊びのアイデア:
- 簡単な布やフェルトで織姫・彦星の衣装を作る。
- 「星を一緒に集めよう」「天の川を作って渡ろう」などのミッション形式で遊びを展開する。
- キラキラのモールや星形のシールで、星探しゲームをするのもおすすめ!
5. シンプルな会話の中で自然に伝える
あえて特別な時間を設けなくても、日々の生活の中でさりげなく七夕の話題を取り入れることは、子どもの心にすっと入りやすい方法です。
ポイント:
- 「〇〇ちゃんはどんなお願いごとしたの?」など、子どもの考えを自然に引き出せます。
- 無理に“説明しよう”とせず、日常会話の延長線で興味を引き出すスタイルが◎。
【おまけ】七夕にぴったり!おすすめ製作3選

七夕のお話を楽しんだあとは、子どもたちの願いや想いを「かたち」にしてみましょう。
自分で作った作品は、行事への興味を深めてくれるだけでなく、心の表現にもつながります。
ここでは、保育園やおうちで手軽に楽しめる七夕製作アイデアを3つご紹介します。
どれも年齢に応じてアレンジしやすく、行事の導入にもぴったりです♪
1. 願いごと短冊~願いごとを色と形で表現してみよう~
折り紙や画用紙を使って短冊づくり。字が書けない小さなお子さんでも、絵やシールで思いを表現できます。子どもが思い思いに願いごとを書いて「自分だけのお願いごと」を意識できますよ。
2. ゆらゆら織姫・彦星~天の川を越えて会いにいく二人を手作りで~
折り紙や画用紙を使って、織姫と彦星の人形飾りを作ります。
目や口、着物の模様を自由に描いて「自分だけの織姫・彦星」になります!
3. 星のステンドグラス風アート~キラキラお空に願いをこめて~
黒い画用紙に星形の穴をあけ、裏からセロファンや折り紙を貼ると、キラキラ光る飾りに!天の川を連想させる美しい製作になります。
詳しくは、やり方を紹介する記事を後日公開予定です。どうぞ楽しみに♪
まとめ:七夕の行事が楽しいものとなりますように!
七夕は、ただの年中行事ではなく、
「人を思う気持ち」や「願いを込める心」など、子どもたちの内面を育む大切なきっかけになります。
でも、織姫と彦星の話や短冊の意味って、大人にとっても少し難しく感じることがありますよね。
そんなときは、無理に全部を説明しようとしなくて大丈夫です。
絵本や歌、ごっこ遊びなどを通して、
子どもたちが「なんだかおもしろい」「もっと知りたい」と感じることが何より大切。
ほんの少しの導きが、心に残る七夕の思い出になります。
子どもたち一人ひとりの感性に寄り添って、
その子なりの“七夕の物語”が育っていくような関わり方を、ぜひ楽しんでみてくださいね。